生物増殖の格子モデルシミュレーション

総合科学教育課程 総合科学専攻

3081-6005 今田圭悟

1.目的

本研究は、確率的ルールで状態遷移する格子モデルを用いて、生物増殖の個体数変化をコンピュータシミュレーションするものである。シミュレーションで得られた増殖の推移などを検討し、個体数変化に対して繁殖率・死亡率・成長理論の及ぼす影響、繁栄するための臨界条件を求めることを目的とする。

 

2.方法

 研究はVC++言語で作成したシミュレーションプログラムを用いて行う。モデルは、離散時間で同期的に増殖する(例えば毎年繁殖期になると一斉に増殖する)生物集団を想定し、増殖率を決定するパラメータとして繁殖率・死亡率を与えるものとする。

無性生殖・有性生殖モデルの成長規則を以下に示す。

1)無性生殖

 各生物個体は各々独立に死亡する確率P(D)を持ち、パラメータdで決定される。死亡過程は繁殖過程に対し時間的に優先する。繁殖する確率P(B)はパラメータbにより決定される。このとき、個体を生む生物ω()の近接格子点に既に生物が生息している場合、繁殖過程は起こらないものとする。

死亡過程         ω()=1→0

P(D)P(>rand)

繁殖過程         ω(+)=0→1

P(B)(1‐P(D))×P(>rand)×P()

(b:繁殖率)              

  (P()P(ω()|繁殖可)×P(ω(+)=0)

2)有性生殖

 死亡過程は無性生殖の場合と同様の規則とする。繁殖過程は、ω()の近接格子点に繁殖可能なオスが生息している確率を、無性生殖の場合の規則に加えたものとする。

死亡過程         ω()=1→0

P(D)P(>rand)

繁殖過程         ω(+)=0→1

P(B)(1‐P(D))×P(>rand)×P()×P()

(b:繁殖率)              

  (P()P(ω()|繁殖可)×P(ω(+)=0)

P()P(ω(x+z)|繁殖可のオス)))  

3.結果と考察

死亡率・繁殖率を連続的に変化させてシミュレーションを行うと、死亡率・繁殖率ともに、ある値を境にして、絶滅と繁栄とに分かれる相転移現象が確認された。図は成長期が0の場合だが、成長期を変えた場合でもこれと類似した相図が得られた。表は死亡率の臨界値を成長期ごとに示したものである。成長期が長くなるにしたがって死亡率の臨界値も下がっている。これは成長期が長いほど、格子空間上に分布している生物集団の繁殖率が下がるためだと考えられる。

右の図は成長期0、繁殖率1の場合の生存確率である。このように生存確率を秩序変数とする相転移が起きている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 


 


個体数変化はロジスティック成長を示した。ロジスティック方程式における、内的自然増加率r、環境収容力Kはそれぞれ死亡率、繁殖率、成長期によって定まることが分かる。成長速度に関しては成長期、繁殖率、死亡率の順で影響力が大きくなっている。

 


有性生殖では、平衡時の個体数に雌雄のバランスが関係する事がわかった。成長期が長い場合、あるいは死亡率が大きい場合など、繁殖に厳しい条件のもとでは雌雄の割合がほぼ均等に近づいてゆく傾向が確認できた。

4.まとめ

 本研究では、生物の増加・減少の個体数変化を、格子モデルを用いた確率モデルで考察してコンピュータシミュレーションを行い、個体数を定量化して示すことができ、ロジスティック的曲線を得ることができた。さらに繁殖率・死亡率はともにある値を境にして個体数変化に劇的な変化を示し、絶滅相と繁栄層に分ける一次相転移を示すことがわかった。

 今回格子モデルを用いることで、数理モデルに空間構造の考えを取り入れたが、これまでの、空間構造を無視したロジスティック方程式での結果と同様の結果を得ることができた。また、成長期というパラメータは、「繁殖率」という漠然とした確率変数の要素を具体的な概念として抽出したものといえる。

 今後さらに死亡率・繁殖率について、それらが実際の生物増殖過程において、どのような環境的要素を含んでいるのかを具体的に抽出する必要性が大きな課題として残る。しかし空間構造を含んだ数理モデルにおいて、ある程度現実に合致した結果を示せたことで、今後更に捕食のモデルや雌雄を考慮した有性生殖のモデルなど、空間構造に制限のあるモデルへの展望が開ける。